運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「ちなみに、なんて名前なの? その悪魔。ちょっとお父さんに話してみようかな。医師会とかで問題にしてもらえるかもしれないし」
「うーん、なんだっけな、あ……あが付くの、苗字に。確か。あい……」
難しい顔をして必死に思い出そうとしている真帆の隣で、私はぎょっとした。
あい……って、まさか。いや、あいナントカなんてありふれた苗字だし、そんな偶然あるわけないよね。
「真帆、それって、藍澤……じゃないよね?」
「あ、そう!それ! 藍澤先生! 確か心臓外科の専門で、オペの腕は超一流……って美琴? どうしたの?顔がなんか青いけど」
「だ、だって、真帆……」
名前だけなら偶然で片付いたけれど、専門とする領域が同じで、腕が良くて、そのうえルックスまで良い外科医の藍澤さんが、何人もいるとは思えない。
「お父さんに紹介される医者……心臓外科医の、藍澤っていうの」
「え! じゃあ、もしかして美琴、悪魔と結婚させられるってこと!?」
素っ頓狂な声で驚く真帆に、そうみたい……と頷く。父は何を考えているんだろう。娘を女癖の悪い悪魔に渡そうとするなんて、ありえない。もしかして、すでに父も悪魔にそそのかされて……?
あれこれ考えても嫌な方向にしかいかなくて、私はとうとう一つの決断をした。
――悪魔と結婚させられるくらいなら、やっぱり私、日本には帰らない。