運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
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翌朝、私はひとりになったホテルの部屋で目を覚ました。
このホテルでの宿泊の延長は昨夜の分しかできず、つまり今夜はまた別の宿を探さなければならない。
真帆がいないのが心細いけれど、父に私の意志の固さを示すには、これくらいしないとね。
「うーん……それにしても素敵な街」
伸びをしながら部屋の窓を開け、真下を流れる水路を眺める。
船やゴンドラはまだ運航していないようだけれど、そのぶん穏やかな水面に映る街並みが、とってもきれい。この街にいると、自分が映画の主人公になったような気分になる。
「……なーんてね。さて、朝食を食べられるカフェでも探しに行こうっと」
適当に着替えてメイクをし、早々とチェックアウトを済ませた私は、街に繰り出した。
ベネチアは、歩いているだけで退屈しない。それは街の至るところを流れる水路のせいだけじゃなく、立ち並ぶ建物も日本では見られないものばかりだから。
カラフルでポップな外壁の民家が並んでいるかと思えば、一本路地を入った先に、中世のお城を思わせる豪華な建築様式の教会があったり。本当に様々な表情を見せてくれる。
軽く観光しながらしばらく歩いたところにお目当てのカフェを見つけて、さっそく入店しようと足を進めたその時。