運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
翌日。
爽やかな、日曜日の朝――を迎えるはずが、私のコンディションは最悪だった。頭は痛いし体は怠いし、食欲も全然ない。まあ、二日酔いだよね……自業自得だ。
水を飲みに一階に下りていくと、キッチンで家事をしていた母が私の幽霊みたいな顔を見てぎょっとした。
「美琴、ひどい顔よ。もう少し寝てたら?」
「うん……わかってる。でも、出掛けるから……」
それだけ言って、コップ一杯の水を一気飲みした。ぷは、と息を吐くと、今度は母の鋭い追及が。
「もしかして、藍澤先生とデート?」
「……一緒に出掛けるだけ」
「それをデートって言うのよ! もう、なんで黙ってたの~! 行き先は?」
……こうなると思ったから黙ってたんだけど。
頭がさらにガンガン痛み出したような気がしながら、短く答える。
「箱根」
「あらいいじゃない。お泊り?」
「まさか。先生仕事あるし。でも、温泉は入るつもり」
「じゃあ、山翡翠(やませみ)の女将さんに連絡しといてあげるわ! 娘と婿が行くって」
山翡翠というのは、昨日藍澤先生にも伝えた、家族でよくお世話になる旅館の名前である。私もそこに行くつもりではあったけど、そんな風に連絡されると逆にやりづらい。
……っていうか、ムコって違うし。