運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「こら、蘭子(らんこ)! こっちへ来て挨拶しなさい!」


中谷先生が彼女を手招きし、しかりつける。しかし蘭子さんは指にくるくると髪の毛を巻き付けながら、間延びした声で話す。


「だーれぇ?」

「神鳥記念病院の院長先生と、娘の美琴さんだ。まったく、お前ときたら……」

「神鳥……」

綺麗にネイルされた人差し指を顎に当て、蘭子さんが何か考えている。そして、何か思い当たったかのようにぱちんと両手を合わせると、急に満面の笑みを浮かべた。


「ああ。藍澤先生と愛のない結婚をする、不幸な女の子!」


彼女の無邪気な様子とは裏腹に、場の空気が一瞬にして凍り付いた。

な、な、……今、蘭子さんはなんて?


「なんて失礼なことを言うんだ蘭子!」

「だってぇ~。ホントのことでしょぉ? ナースの子たちもみんな言ってるよ。今まで光源氏のように数々の女性と関係してきたスキャンダラスな彼が、急にいっさいの女性関係を絶って結婚を決めただなんて、神鳥記念病院の後継者の椅子が欲しかっただけだろうって」

「お前は少し黙りなさい!」


中谷先生がたしなめるのを無視して、蘭子さんは人を見下したような笑みを浮かべながら続けた。


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