運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


まったく、お父さんてば余計なことを……。

私は愛想笑いを張り付けながら、なんとなく心に引っかかるものを感じていた。中谷先生の娘さんって、もしかしたら……。

脳裏によみがえるのは、ベネチアから帰国した日に空港まで迎えに来てくれた、工藤さんとの会話だ。


『前の病院の院長の娘をたらし込み、次期院長を狙っていたようです』


その噂の“院長の娘”と、同一人物だよね……? いったい、どんな女性なんだろう。男漁りに出かけた、なんて言ってるけど……。

会場にいる女性たちをキョロキョロと見回して、どの人なんだろうと思っている時だった。


「パパぁ、ダメ~、今回、オジサンばっか」


そんな甘えた声とともに、人々の間を縫って一人の女性が姿を現した。

緩やかなウエーブのかかった長い髪、背中がぱっくり開いたイブニングドレス。プルっと潤んだ分厚い唇に、くっきりアイラインの引かれた猫のような瞳。

も、もしかしてこのお色気美女が……?


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