眠らせ森の恋
 ええっ? と振り返ると、渋い顔をした奏汰が立ち上がり、こちらに来るところだった。

 西和田も一緒で、苦笑いしている。

 い、居たのか。
 誰だ。あんなところにデカイ観葉植物なんぞ置きやがったのは、と思いながら、三人で、

「お、お疲れさまですー」
と頭を下げると、奏汰はなにも言わずに、下げ返してきた。

 そのまま行ってしまう。

 その後をついて行きながら、西和田が、阿呆か、という顔をして、こちらを見ていた。

「やだーっ。
 西和田さんに聞かれちゃったーっ。

 なんでこの店にしたのよ、正美ーっ」

「ええーっ? 英里さんが、此処いいわねって言ったんじゃないですかーっ」

 二人は揉めているが。

 いや、聞かれちゃったって、もともと、バレバレなので別にいいんじゃないでしょうか、と思っていた。

 まあ、それを言うなら、こっちもバレバレなので別にいいような気も――

 いいような気も、するんだが……。



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