眠らせ森の恋
「始まり方が気に入らないのはわかる。

 でも、俺はお前が――」

 ……お前が?

「お前が――」
と言いかけ、奏汰は黙る。

 お前がっ!?
とつぐみは思わず、身を乗り出していた。

「お前が迫ってきてどうする」
と奏汰は溜息をつき、つぐみの額を掌で押し返してきた。

「ともかく」

 あ、話変えた。

「別に誰でもよかったわけじゃないんだ。

 信じてくれ、おやすみ」
とだけ言って、帰っていってしまった。

 お前がっ!?
とまだ思いながら、廊下に顔を覗けて、つぐみは去っていく奏汰を見送った。
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