眠らせ森の恋
 



 部屋に戻った奏汰は考える。

 お前が――

 なんだったんだろうな?

 思わず言いそうになったが、なにを言おうとしたのかはわからない。

 いや、素直に認めたくないというか。

 そうかなーと思いつつも、認めると負けた感じがするというか。

 つぐみ……。

 さっきまで、つぐみが座っていた場所がまだ温かい気がした。

 そこに頭をのせる。

 目を閉じると、つぐみの怪しい賛美歌が聞こえてくる気がした。

 つぐみ……。

 俺はお前が――

 その先を、夢の中、塔の上から降りてくる気のないつぐみに言いながら、奏汰は眠りに落ちていた。





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