眠らせ森の恋
 うう。
 まあ、確かに、と思っていると、そのまま出て行こうとした西和田が、ふいに振り返り、

「あ、そうだ。秋名」
と言ってきた。

 はい? と顔を上げると、肩をつかんで、壁に押し付け、キスしてくる。

 奏汰のように軽く触れるなどと言うものではなかった。

 な、長い長い長いーっ。

 慌てて押し返そうとしたが、西和田は奏汰のようにやさしくはなかった。

 しばらくして少し離れた彼が訊いてくる。

「どうだ?」

「は……は?
 どうだって?」

「社長にされたときと同じくらい落ち着かない気分になったか?」

「え、えーと。
 それはこういうことされたら、落ち着かなくなるんじゃないですか?」

「社長とどっちが?」

 ちょっと真面目に考えてみた。
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