眠らせ森の恋
 




 奏汰は先にベッドに上がり、昨日の自分のように枕許に座ると、

「さあ、来い。
 つぐみ」
と膝を叩いてくる。

 なんか犬でも呼んでるみたいなんですけど。

 ……わん、と思いながらも、せっかく親切で言ってくれているのだからとベッドに上がってみた。

「よし、此処に頭をのっけて」
と最初に、自動車教習所に通ったときのように丁寧に説明される。

 さあ、寝ろ、と奏汰の膝に頭を押しつけられ、布団をかけられた。

 ふわりとした温かさとともに、奏汰の匂いに包まれる。

 うわっ、と思って、思わず起き上がろうとしたが、頭を大きな手で押さえつけられた。

 いてててて、と言うと、
「いいから寝てくれ」
と奏汰は言ってくる。

「俺に不眠になって欲しくないんだろ?
 お前が元気がないと、なんだか俺も落ち着かないんだ」

 ほら、と昨日の話を引っ張り出して言ってきた。

「ストレスが溜まるから」

 ダンボールでも持ってこい、お前への不満を叫ぶから、と言って、少し笑う。
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