眠らせ森の恋
 




 その日、何故か、猛烈な勢いで流れていく川に落ち、岩にしがみついている夢を見た。だが、その岩は濡れた苔でぬるぬるなのだ。

 今にも手が離れそうだ、と思っていると、
「なにやってるんだ、つぐみっ」
と背後から声がする。

 必死にしがみつきながら振り返ると、両手を広げ、濁流を物ともせず立っている奏汰が、
「来いっ」
と言っていた。

 あそこに行ったら助かる。

 安全だ。

 そう思いながらも、何故だかその手を離せないでいた――。







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