眠らせ森の恋
 吸ってー、吐いてー、と呼吸法をやってるみたいだな、と笑ったとき、
「あれっ?」
と言いながら、本を持っている自分につぐみがにじり寄り、編み図を覗き込んできた。

 当たってる。
 当たってるぞ。

 肩が当たってるっ!

 って、何故、俺が緊張せねばならんのだ。

 なんの役目も果たさない婚約者に側に寄られたくらいでっ。

 いつもなら飛んで逃げるつぐみは編むのに夢中なのか、特になにも思ってはいないようだった。

 もう俺に慣れたとか?

 飽きたとか?

 ずっと側に居るから、ソファの一部みたいに興味なくなったとかっ?

 って、なんで俺がそんな心配しなくちゃならないんだっ。

 俺だけ動揺してっ。

 俺だけ莫迦みたいじゃないかっ。

 横で素知らぬ顔で、せっせと編んでいるつぐみが無性に憎たらしくなってくる。

「貸せっ」
と編みかけのセーターを取り上げた。

 ああっ、という顔でつぐみが手を伸ばす。
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