眠らせ森の恋
 



 ……気になるな、あのセーター。

 社長室に西和田しか居ないとき、奏汰は、彼に訊いてみた。

 西和田は結構、つぐみと話してる。

 しかも、自分に対してよりは、腹を割って話しているように見える、と思ったからだ。

「西和田」
と呼びかけると、はい、と彼は読み上げていたファイルから顔を上げた。

「お前、つぐみのセーター、誰に編んでるのか訊いたか?」

 すると、西和田は特に面白くもなさそうに、
「社長でしょう?」
と言う。

「……つぐみがそう言ったのか?」

「言ってましたよ」

 そ、そうなのか?

「社長、高校生じゃあるまいし。
 暇なこと気にしてないで、次のページ見てください」
と西和田は素っ気なく言ってくる。

 お前、今、暇なこと気にしてないでっつったか、このスパイ。
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