眠らせ森の恋
 社長、と奏汰を振り返る。

 その目を見つめて言った。

「私、横で支える準備をしてますけど、出来るだけ自力で歩いてください。
 わかりましたね」

「なに子どもに言うように言ってるんだ。
 それくらいのこと、出来るに決まってるだろう」

 口調は相変わらずだが、ある程度、薬で熱は下げたが、体力をかなり奪われたようで、立っているのがやっとの感じだった。

「では、行きましょう。
 西和田さん」
と目の前に来た扉を見て言うと、あっ、私がっ、と松本が走って行き、扉を開けてくれた。

 結婚式場か、という感じだった。

 西和田とともに、奏汰の横に寄り添い、一番前にみんなを向くように置いてある長机のところに行く。

 少しざわついていた。

 秘書がついて来たにしても、奏汰と位置が近すぎるからだろう。

 だが、あんまり離れると倒れそうで怖い。
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