眠らせ森の恋
 普通、これらは結納金で買うものでは、と重そうに業者の人たちが運んで行く箪笥らしきものを見ていると、

「あら、結納金なら、いただいたわよ」
と言い出す。

「ええっ? いつの間にっ?」

「結納は白河さんがもう少し元気になられてからやるみたいだけど。

 いろいろとご入用でしょうからって、ほら、この間半田さんがうちにご挨拶に見えられたときに、少し置いていってくださったの、三百万くらい」

 それ、少しなのですか? お母様。

 だがまあ、その金で娘が買われたのだと考えると、はした金かもしれないが。

 あれからすぐに奏汰は実家に挨拶に来た。

『責任取ってお嬢さんを幸せにします』
と言う奏汰に、なんの責任だ、手篭めにされた覚えはないが、と思っているつぐみの横で、何故かすっかり奏汰が気に入ったらしい父は、

『これもご縁なんでしょうな』
と言いながら、機嫌良く酒をそそいでいた。

 あとで、
『一目見て、お前を大事にしてくれる男だとわかった』
と満足げに頷いていたが、娘は、いや……お父さんの目は節穴ですか、と思っていた。
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