過保護な御曹司とスイートライフ
「別に、男に大声出されて椅子蹴り上げられて泣くなんて恥ずかしいことじゃないだろ。なのに、なんでおまえはそんな自分を責めるみたいな顔して笑うんだよ」
苦しそうな声で言った成宮さんは私の手を引っ張るとそのままきつく抱き締める。
ギュッと、大事なものでも確認しているかのように抱き締められ、それを頭で理解した途端、心臓が飛び出しそうなくらいに大きく跳ねた。
一気に顔が熱くなり、自分でも赤くなっているのがわかるほどだ。
「あの、成宮さん……」
こんなの心臓がもたない。
トクトクとどんどん速度を上げていく心拍数は心配になるほどで、頭のなかはもうパニックだった。
背中に回った腕や、触れている胸板の逞しさが伝わってきて、意識してしまう。
慶介さんに抱き締められたってなにも思わなかったのに……相手が成宮さんだってだけで、こんな――。
「これは、俺のわがままなんだろうけど」
私を抱き締める腕は緩めずに、成宮さんが話す。
「おまえが泣いたって駄々こねたって、嫌な顔なんかしないから、俺の前ではおまえの思うまま我慢してほしくない。……それと、なんでそんなおまえが泣いたとき傍にいたのが俺じゃなくて慶介なんだよ」
響きのいい声が耳元から直接入り込み、胸の奥にじわりと沈んでいく。
成宮さんのくれた言葉、全部が嬉しかった。困らせてもいいと私を安心させてくれるところも、慶介さんに嫉妬しているところも全部がうれしくて、抱き締め返したい衝動に駆られる。
――けれど。
手を持ち上げたところで、我に返り……それをやめた。
そして、抱き締め返す代わりに口を開く。
「成宮さん」と呼ぶと、少し間を空けてから「なに?」と返ってきたから、ふっと笑いながら話す。