過保護な御曹司とスイートライフ



「……すごいですね」

約束通り、二十時にアパート前に迎えにきてくれた成宮さんが案内してくれたのは、金曜日の夜宿泊したホテルではなく、きちんとしたマンションだった。しかも頭に〝高級〟がつくやつだ。

六階建てのマンションは、広い土地にゆったりと建っていて、屋根のある駐車場から建物まではデザイン性のあるタイルが敷かれ、その脇には背の高い木が植えられている。

サワサワと揺れる葉音が耳に優しく感じ思わず足を止めると、成宮さんが「どうかしたか?」と数歩先から聞くから、慌てて首を振る。

アパートから持ち出した荷物は、大き目のボストンバッグふたつ分。そのふたつともを成宮さんが持ってくれていた。

遠慮はしたけれど、奪うように持たれてしまった。

「この間のホテルで暮らしているんだと思ってました」

隣に並びながら話しかけると、成宮さんが「ああ、簡単に言えばあのホテルからここに引っ越してきたんだよ」と教えてくれる。

自動ドアから入ると、綺麗なエントランスが広がっていた。床はベージュ色のタイルが敷き詰められていて、それを高い天井からの暖色のライトが照らす。

左を見ると、シルバーに光る集合ポストがあり、高級マンションでも集合ポストなのか……と変なところで感心してしまう。

でも、そのポストの材質ですら重厚感が漂っているから、やっぱりレベルが違うんだろう。

「まぁ食事とか掃除が楽ではあるけど、ずっとホテル暮らしっていうのもどうかと思って、一ヵ月くらい前にここ借りたんだ。ただ、引っ越ししたっきり荷物片付けるのが面倒で放ってただけ」

「え……じゃあ、その一ヵ月間、マンションの家賃とホテル代、両方払ってたってことですか?」

勿体ない……と思い眉を寄せると、成宮さんはバツが悪そうに笑う。

「あー……まぁ。でも、そんなわけだから、鈴村が来るのをきっかけに俺もちゃんとしようって思ったってわけだ。……あ、鈴村、鍵出して」
「鍵? どこですか?」




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