ルーンの姫君《連載》
そこにいたのは、武王の名に似つかわしくない、たるんだ肢体を金色の衣装に押し込んだと土色の肌の老人だった。
英知の冠を頭上に乗せていながら、ひどく禍々しいにごった目で私をみていた。


「そうか、そなたがアリスの娘か。我の慰み者になりながら最後まで逆らいおった売女と同じ、生意気な目をしておる」


私は耳を疑った。宮廷の言葉は耳慣れぬし恐らく聞き間違えたのだと胸に言い聞かせた。


父王が母のことを悪く言うはずはない。私は精一杯の敬愛を身体中で示すように深く頭をさげた。

だが、それからはあまりにもむごい神からの試練が待っていた。

居並ぶ家臣や王族の方々の前で、あろうことか母を侮辱する聞くに堪えない言葉をあびせかけられた。

「卑しい血を持つ穢れた娘よ。だが、我の寛大な御心で王家の末席に加えることを許そう」

戸惑う私に追い討ちをかけた。

慈悲に感謝するようにと苦々しい口調で告げながら、来月隣国の第四王子へ嫁すようにと命じたのだ。



< 6 / 23 >

この作品をシェア

pagetop