ロング・バケーション
世間一般の人達が休むべき時期に休んだことなんて一度もない。

ましてやロング・バケーション?
そんなもの取ったことだってないよ。



「くそー、お正月もバッチリ勤務だし」


希望休は三日間だけと決まっている。
冠婚葬祭が優先され、私用は後回しにされるのだが。


「その私用すらもない私って情けなくない!?」


誰に言うでもなく質問した。
うんうん、と自分で答えながら洗った注射器を消毒機の中に入れてスイッチオン。


「随分荒れてるね」


男性の声がして振り向いた。
しまった。医務室のドアを閉め忘れていた!?



「……なんだ。城島先生か…」


良かった…と大きな溜息を吐く。
戸口に立ってドアの引き戸を握っていた彼は、お言葉だな…と呟いて中に入ってきた。


「なんだと言われると心外だな」


「いや、あの、別に他意はありませんから」


お気になさらず…と言って直ぐさま話を切り替えようとしたが。


「何をそんなに荒れてたんだ?ブツブツと独り言言いながらキレてただろ?」


「聞いてたんですか!?」


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