ロング・バケーション
いつから。…と言うかどこら辺から。


タラー…と冷や汗を感じながら顔を見つめる相手は勤務先のドクターだ。


内科医の城島航(じょうじま わたる)先生といって、ルックスは良くて性格は温厚。
施設内にいる患者だけでなく、働く職員からも慕われている存在。


「聞いてたと言うか嫌でも耳に入るよ、ドアを開ければ」


音もなく静かに開けたんだな…と思いながら今度からは気をつけなくちゃ、と考えた。


「ははは。そうですよねー」


質問に答えず笑って誤魔化した。
城島ドクターは冷めた様な眼差しを向け、先輩看護師の名前を口にした。


「国村さんは?」


「早出だから休憩中です」


「そうか。さっきのカンファレンスで話し合った患者についてもう少し話を聞いておこうかと思って来たんだけど」


「じゃあ待ってますか?十分もすれば上がって来ますよ」


私は手を洗って椅子を勧めた。
壁際に並べられた三つのデスクは、この施設に勤める常勤看護師用のものだ。
その一つ、看護主任の国村さんの椅子に座ったドクターは、さっきの話を振り返した。


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