ロング・バケーション
年末年始に限らず、ゴールデンウィークでもお盆でもクリスマスでもいいけれど。


「ふーん、休みたいんだ」


「そりゃ休みたいですよ。だけど、私用もない人間だから。私」


彼氏もいないしですね…と、情けなくなって笑った。


「彼氏がいたら休める訳?」


見下ろしてくるドクターにそりゃ私用が出来ますからね、と返事する。

実際はだからと言って必ず休めるとは限らないけれど、休み希望を入れる口実くらいにはなるだろうと思う。


「だったらさ…」


ジャリ…と足元の砂利を踏み締めるように踵を返すドクターが正面に立ち塞がった。

何だ一体…と思い立ち止まると、如何にも人の良さそうな微笑みを間近で見せられ……


「俺と付き合ってみない?もしかしたら、ロング・バケーションを取って休めるかもしれないよ?」


「ロング・バケーション?」


それはどういう意味だ?


「取れるかどうかは野々宮さん次第だけど、少なくとも今の状況よりかは休みも取り易くなるんじゃない?」


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