ロング・バケーション
ニッコリと笑顔で言っているけれど、暗に誘われているだけだと思う。
彼と『付き合う』イコール『ベッドイン』に違いない。



「どう?野々宮さん」


目の前に立っている人は、これまできっと女性に断られたことなんてないのだろう。
ここは一丁自分が初めてお断りをする女になってみるのもいいかもしれないな…と思うが。



(う~ん、それにしては少し惜しいかな)


何だかんだと良くない噂ばかりを耳にするドクターだけど、そうは言っても優しいし、車もお金もスマート過ぎるくらいに出してはくれる。


じぃっと顔を眺めていると、フ…と微笑まれてしまった。
この年までバージンを守ってきたけれど、どうせ捧げるのならイケメンな方がいいだろうし……



(どうする?乗っちゃう?)


自分に聞くように考えていた。
こんな風に頭の中では迷っているけれど口の方は正直で。


「じゃあ、お付き合いします!」


軽い口調に乗るように答えていた。
何言ってんの!と自分にツッコミを入れたが既に遅く。



「決まり」


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