ロング・バケーション
「えー、何ですか。そのイメージ」


だったら普通は連れて来ないでしょう…と唇を尖らせると、ほらそういうのも違うと笑う。


「そんな風に膨れっ面もあんまりしないだろう。黙々と仕事をしてますという印象しかなかった」


「私だって人間ですからね。喜怒哀楽くらい一応持ち合わせてますよ」


職場では命が掛かっているから真面目に働いているだけだ。
だけど、此処は私を癒せると思ってドクターが連れて来てくれた場所だし。


「済まないとは思ってるよ。職場の雰囲気だけで判断して」


抱いているマルチーズに鼻を舐められ、擽ったそうに目を細めているドクターも私にとっては意外だ。

もっと洒落た店にでも連れて行かれるのかと思っていたから、こんなフランクな所に来るとは思わなかった。


「それを言うなら私も同じかも」


そう言ったがドクターは鼻を舐められっ放しで耳にも入ってないみたい。
何よと考えたけれど別にいい。
此処ではドクターよりも子犬の方を相手にしよう。



「どうも嫌だな」


私がダックスにおやつのジャーキーをあげていると、隣からドクターが近づいてくる。


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