ロング・バケーション
「ところで、何をあんなにキレてたんだ?」


しつこいなと思ったが、別に隠すことでもないか。


「私って私用がないなって思っていたんですよ。盆正月クリスマス、全部仕事でつまんないなーとボヤいていただけです」


立って話すのも反省書を切られる学生みたいで嫌だから座った。
真ん中の椅子を開けて自分のデスクに着いた私を整った顔立ちのドクターが見つめている。


「野々宮さんは年中行事を楽しまない派?」


「楽しむとか楽しまないとか言う前に一緒に過ごしてくれる人もいませんよ」


だから仕事以外にすることがないんです…と呟けば、城島ドクターは一言。


「勿体ない。若い今しか楽しめないのに」


「はははは」


この人は年がら年中楽しんでそうだなーと施設内に広まっている噂を思い出しながら笑った。
城島ドクターについて流れている噂。


遊び人で誰とでも寝る男。
お金はあるが、誰とも付き合いが長続きしない。

恋人になれても一週間でサヨナラはザラで、すぐに飽きられると聞いている。


そりゃこれだけルックスがいいなら当然だけど…と思いつつ顔を眺めた。


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