ロング・バケーション
その夜もドクターと一緒ではないと知り、一咲は呆れながらも驚く。

噂では速攻ベッドに誘うイメージの彼だったが、実際はそうじゃないのかな…とライン上で推測していた。


『実は案外と堅物な人だったりして』


ニヒヒ…とほくそ笑むスタンプが付いてくる。
どうかな…と送り返すと、それもギャップがあっていいじゃん、と戻ってきた。


『センセは凛ちゃんに他の人には無いものを感じたのかもしれないよ。だから、迂闊には手を出せないと思ったのかも』


一咲の言葉に一瞬ドキリと胸が弾んだ。
それは、もしかすると男性経験の無さかな…と思ったからだ。


『大事にされるなんて羨ましいことだよ。凛ちゃんも精々勿体ぶってやるといいよ』


ガンバレ、と変な応援をされてしまった。
弱り顔で笑うスタンプを送り返し、オヤスミと打った。


おやすみ~と戻ってくる文字を見つめながら、頭の中にドクターが言った言葉が思い出されていた。


精一杯、真面目に付き合うと言ってくれた彼の真剣さに、胸が熱くなるのを感じて夜を過ごした……。


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