ロング・バケーション
のうのうと言い放つドクターに、ラインもしてこなかったくせに?と言いたくなる。


「先生は良くても私は慣れてないから困ります」


注目されるのは嫌だ。
直ぐに捨てられるのよ…と、今までの女性達の様に噂されたくはない。


「つまらないなぁ」


渋々だけど彼は仕様がないと言って了承してくれた。
そこへ非常勤の細井さんが出勤してきて、ホッと息を吐いた。



「おはようございます。…あら、城島先生」


朝からラッキーなものにでも遭遇したかの様に微笑んでいる。
彼女みたいな中年の女性からも人気があるドクターは、爽やかな笑みを浮かべて挨拶を返した。



「おはようございます。細井さん」


さり気なく私から離れると、ドアへと向かい始めるドクター。

それじゃあまた、と言ってドアを閉めていくのを見届けた細井さんは、ニヤけた顔つきで私の方へとやって来た。



「何?密談してもしてたの?」


聞き耳を立てるように聞かれ、いいえ何でも…と否定した。

細井さんはニヤニヤしながら、ふーん…と唸り、そう言えば先生の肌は日焼けしていたように見えたわね〜と呟いた。


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