嫌われ者の怪物と空っぽの少女

「っふぅ…ごちそうさまぁ……お腹いっぱいだー」



少し膨らんだお腹をさすりながら、綺麗に食べたお皿をおばあさんがいるキッチンへと運ぶ



「あ、おばあさん、私も手伝うよ」



「いいえ。今日お誕生日なのはどちら様です?今日くらい、好きなことをして過ごしてくださいな。」



マユは、ちょっと不満そうにほっぺたを膨らませながらも、「はーい」と言って近くにあったソファーに寝転がった



窓に広がるのは、ずっと続く緑の森。

マユは、街を見たことがなかった。


外にすら、あまり出たことがなかった。


「………街って…どんな景色なんだろう」


窓越しの景色に、

少しばかり、飽きてきていた



おばあさんは、少しかわいそうだとは思いながらも、いつもマユに言い聞かせている言葉を口にした


「…街には行っては行けませんよ。……特にあなたは、姿を見せてはいけないの」



「……うん。わかってる…けど」


どうして?と聞こうとした声を遮るように、今までずっと耳を通り抜けていた水の音が止まった


「洗い物が終わったので、…少し外へ空気を吸いに行ってきますね」


そう言っておばあさんは、薄手のカーディガンを羽織り、扉へと足を向けた。


「あ、…うん。熊には気をつけてね」


なんとなく、おばあさんと一緒についていきたかったけど、熊が怖かった。



マユは、近くにあったタオルケットを抱きしめて、少しの間のひとりぼっちの寂しさを埋めた


……



もう、40分ほど経っただろうか



おばあさんはまだ戻ってこない


「遅いなぁ…」


心配そうにおばあさんが出ていった扉を見つめる


「……」


「…お、お外…でてみようかな……」



ちょっとした好奇心だった。


タオルケットを頭にかぶって、近くにあった木の枝を持って、


勇気を出して


扉を開けた
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