嫌われ者の怪物と空っぽの少女
「…お兄さん、あんなにたくさんのお医者様はいらないわよ…?」
謎の恐怖心を追い払いたくて、お兄さんに問いかけた。
でも
「……さぁ、おばあさんの元へ案内して。」
お兄さんは答えてくれなかった。この街では、これが普通なんだろうと、自分に言い聞かせた。
「……は、はい。今すぐ!」
足早に、その数十人の人を連れて、おばあさんの元へ戻った。
「おばあさん!お医者様がたくさんきてくれたわ!もう助かるわよ…」
…でもおばあさんは、なにも反応がなかった。
「おばあさん……?」
するとその数十人の中の1人が、おばあさんに近づき、手首に指を当てた
「…死んでるね」
「……そんな…」
信じられない現実に、今にも倒れそうだった。でも、
「でも足の怪我のせいじゃないさ。……呪いだ」
呪いだ、運命だ。口々にみんなが言った
みんなの顔は、暗く、目は虚ろだった。
「の、呪い…?運命…?どういうこと……?」
「やっぱりなにもしらされてないのか…」
すると、大きな鞄を持っていた1人が、マユの元へとゆっくり近づき、鞄から取り出した手枷をマユに付けた。
「これは何…?私、なにかしたのかしら…?」
「……早くこちらへ来なさい」
数十人の態度が、あからさまに冷たくなった気がした
汚物を見る様な目…憎みの目…哀れみの目……罪悪感の目……
たくさんの目が、マユへ向けられていた
その瞬間、
マユは、自分の居場所はもう無くなったのだと、なんとなく悟った