溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 合同入社式の時、偉い方々と思われる面々に見られていたのは、もしかしたら紹介者とのつながりからのことだったのかもしれない。だが、〝あしながおばさん〟である〝ゆりこおばさん〟からは、なるべくこの件は口にしないほうがいいとアドバイスを受けている。

(縁故で入ってきたって、やっぱり印象よくないものね)

 嘘をついてまで否定することはないだろうが、自ら口にすることもない。

「紹介というほどではないです。たまたま知人に就活の話をしたら、こちらで求人募集がされているから受けてみてはって言われただけなんです」

「あら、そう」

「なにかあったんですか?」

「え? あ、いえ、そういうわけじゃないけど・・上の・・うぅん、なんでもないわ。そろそろ始めましょうか」

(上の・・なんだろう)

 椿は疑問を抱きながらも、問うことはやめた。また機会があるだろう。これから引き継ぎ作業が始まる。二週間でマスターし、その後は一人で行わねばならないのだ。

(気合い気合い!)

 大きく息を吸い、下腹に力を込めた。

 引き継ぎといっても、合同入社式やラクビズのスタッフに紹介されるなどで午前の時間はほとんどなかった。昼までの短い時間はオフィス内の案内や、非常事態時の避難経路の説明などで終わってしまった。 
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