溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 それから浅草に行って鰻を食べ、周辺を観光して回り、夜はスカイツリーで夜景を見ながらの夕食。一日たっぷり遊んで九時頃に戻ってきた。

「おかえりなさいませ。あの、真壁さま」

 と、コンシェルジュが話しかけてきた。

「なんですか?」

「先ほどマリ・コールドマンさまとおっしゃる方が訪ねていらっしゃいまして、真壁さまのお帰り時間にまた来るとおっしゃっておられまして」

「マリが?」

 思わず出た真壁の言葉にコンシェルジュは知り合いだと理解して安堵したようだ。だが真壁と椿は驚きに目を見開いていて、特に椿は動揺して呼吸するにも苦しいくらいに息を詰めている。そんな姿に好まれない客なのだとコンシェルジュは察したようで、また硬い表情になった。

「はい。では、戻っていらしたら連絡申し上げますので」

 コンシェルジュはそこまで言って言葉を切った。目が二人よりもはるか後方に向けられている。なんだろうと思って振り返ると、エントランスホールのガラスの自動扉のところでマリが立っているのが見えた。

「あちらの方です」

 説明されなくても見ればわかる。入ってきたエキゾチックでありながら白人らしい容姿とすばらしいプロポーションは一度見たら忘れない。

 椿は自分の顔が最大限こわばっているのを感じた。言い訳できない決定的場面を押さえられた。

「ハイ、タクミ。平日は忙しいって言うから土曜に来たの。外出から戻ってきたんだし、いいでしょ、話をする時間をもらっても。まだ、九時だし」

 言いつつ、チラリと鋭い視線を椿に向ける。その一瞥だけで椿は縮こまってしまった。

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