溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「それともこんな時間まで待っていたレディを追い返すの?」

 コンシェルジュの前でもある。不穏なムードに平静をよそいながらもこわばっているコンシェルジュ顔が真壁にOKの言葉を言わせた。

 真壁がコンシェルジュに車のキーを渡すと、歩き始めた。そのあとをマリ、椿と続く。三人は連れ立って進み、ガラスの扉を越えて待ちかまえているエレベーターに乗り込んだ。

(どうしよう・・)

 上昇を始めるエレベーターはシンと静まり返っている。激しく打つ心臓の音が二人に聞こえそうでハラハラするが、逃げ出すことはできない。ぎゅっと真壁からプレゼントされた江戸切子のピンヒールが入っている手提げ袋を抱きしめた。

 エレベーターを降り、部屋に行って鍵を開錠。扉をあけるとマリがさっそく上がって奥のリビングへと歩いていった。

「へぇ。なかなかいいじゃない! 景色が最高だわ。高層ビルと海が見えるなんて」

 などと言いながらも、マリはダイニングテーブルに歩み寄り、椅子を引いて腰を下ろす。

「正確にはタクミではなく、ツバキに話があるのよ。座ってもらえる?」

「えっ。あ、はい」

「マリ、何度も言うが」

「タクミは黙って聞いていてもらいたいわ」

「マリ」

「タクミの言い分は聞いたし、私の気持ちは話した。だから今度はツバキの言い分を聞きたいし、私の気持ちを話したいのよ。とにかく黙っていて。ツバキ、早く座って」

 強く促されて身をすくませつつ椿は椅子に腰かけた。正面に座っているマリの顔がこわくてとても顔を上げることなどできない。

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