溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「一線を越えたらいけないって思っていたんだろう。椿が愛しい、成長を手助けしたい、だけど過剰になって自分を見失ってはいけないから、正体を隠して〝大切なおばさん〟でいようってね。椿、今すぐじゃないけど、近い将来、本物の娘になってやってほしい」

「匠さん」

「僕にも、ただ見守るんじゃなく、体を張って守る役目を与えてほしい。椿が好きだ。心の底から」

「わたしも・・」

 肩を抱く腕により一層の力が込められ、椿は真壁の胸に顔を埋めてこみ上げる涙を堪えたが、それは無駄だった。頬をいくつものしずくが伝い流れていく。

 そっと頬に温かい手が添えられ、上を向くように促される。目と目が合うと、ゆっくり真壁の顔が近づいてきたので、椿は瞼を閉じた。

 優しい静寂が広がる。

 唇に触れる感触は優しい。包み込むような温かみがあり、新たな幸福が湧き上がってくる。唇が離れてはうっと息を吸い込む。かすかな空気の振動が伝わってくる。

「・・たく、み、さん」

「明日、出かけたい場所がある。一緒に行ってほしい」

「どこ?」

「内緒。でも、椿がとても喜ぶところ」

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