溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 シンデレラのガラスの靴が、二人をつないでいて、再会を願っていてくれたのだと。

「退院しても母さんはずっと椿のことが気になっていて、病院に確認してさ。亡くなったことを知った時はしばらく呆然としていたよ。椿、母さんがなんの病気で入院していたか知ってる?」

「あ、いえ、知りません。気にはなっていましたが、話してくれないのは知られたくないからだろうと思って」

「うん、それは正しい。早産による死産でね。その後の調子が悪くて入院していたんだ。結局、四か月くらいいたかな」

「死産」

 そうだ。対談記事にもそう書かれていた。だから真壁を一人っ子だと思っていたのだ。すべてのピースはちゃんと合っている。

 椿は改めて〝ゆりこおばさん〟が真壁の母で、確かに十四年前に出会っていたことを痛感した。

「早く結婚して、僕はすぐにできて問題なく出産したのに、その後、十七年間恵まれなかった。まぁ途中の数年は父さんがやたら忙しかったってのもあったんだけど。ずっと女の子がほしいって言っていたよ。願い続けてやっと授かったってのに死産で、それは落ち込んでね。見ていて痛々しかった。それだけじゃない。体調より心のほうを心配したものだった。そこに椿と出会ったんだよ。きっと、年は違えど、自分の子として託されたんだって思ったんだろう。そう思うことで心の支えにしたんだと思う」

「そうだったんですね・・ぜんぜん知らなかった。ゆりこおばさんにプライベートのことを聞こうとしたら、いつもやんわりと〝あしながおばさん〟でいさせてって言われたから」

 真壁は腕を回して椿の肩を抱き寄せた。

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