溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 知人に紹介され、面接を受けて採用された経緯があるので、その恩人に報い、また恥をかかせないためにも気合いを入れて向かったのだが、いざ来てみると、なんとなく居心地の悪くなる視線を感じ、自然と気持ちが下向き状態になってしまった。

(それとも、紹介で面接を受けたことがよくなかったとか?)

 子どもの頃、病院で知り合った〝ゆりこおばさん〟が紹介してくれたのだ。〝ゆりこ〟という名前しか知らない。どういう字を書くのかさえも知らないのだが、椿のことを常に気にかけてくれ、困った時に救いの手を差し伸べてくれる大切な存在だ。椿はこの〝ゆりこおばさん〟のことを〝あしながおばさん〟と思っている。

『みなさん、シンウォール・ホールディングスにようこそ』

 ホールディングスのトップ、真壁喜一郎CEOの挨拶が始まった。

 世界中に千にも手が届きそうな数の基幹会社の支店や子会社、関係会社を持つホールディングスを束ねる男だ。恰幅もよく、よく通る声は張りがある。六十を過ぎているなどとても思えないほどの若々しさ、エネルギッシュさが離れていても感じられる。

 二十分ばかり挨拶を聞いていると、次にホールディングスの親会社にあたるシンウォール商事の社長の挨拶に変わった。

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