溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「あ、ヤバっ。今度こそ起きなきゃ!」

 慌てて着替えると、顔を洗って髪を後ろで一つに束ねた。これから積まれたダンボールから商品を取り出して片付けるのだ。もっと早く起きて取り掛かるつもりだったのに、すっかり寝過ごしてしまった。

 と、ダンボールを持つ手が止まる。くぅと大きな音とともに空腹感が襲った。

(まずは腹ごしらえからかな。コンビニかスーパーに行って今日明日の食べ物を買ってこようかな)

 思い直して立ち上がり、簡単な化粧を始める。近所を歩く程度なのですっぴんでもいい気がするものの、なんとなく抵抗を感じてしまう椿だ。

「行きますか」

 小さなカバンに財布を入れ、鍵を手にする。するとドアフォンが鳴った。

(誰? セールス? それともお隣?)

 確かに右隣の親子とは仲良くなったが。椿は受話器を取り上げた。

「はい」

『雪代さん、僕だ』

 僕?

 頭の中にクエスチョンマークがいくつも飛び交う。だが次の瞬間飛び上がった。

「社長!?」

『うん。今、エントランスにいる。あけてもらえないかな? それとも立て込んでる?』

「いえ! ちょっと待ってください!」

 慌ててオートロックの鍵をあける。待つことしばし。間もなくもう一度ドアフォンが鳴った。

「社長、どうしてここに!?」

「やぁ、おはよう。入ってもいい? それとも、ここで用件を述べる?」

「いえ、どうぞ。あ、でも、すっごく汚くて……」

「用事はすぐに終わるから」

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