溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 真壁の声が頭の中でこだまする。

 頑張ってもなにも思い出せない。半年前の面接で優しく微笑まれたのがはじめてのはずなのに。

「・・やっぱりダメ、ムリ」

 早く思い出して報告したい、そう思うと焦ってしまう。

「はぁ」

 深いため息をついて目を閉じると、思い浮かぶのはさっきのキス、そして温かくて柔らかな唇。ただ、それだけ。

 早鐘は強まるばかりだ。


(寝よう。このまま考え続けたら心臓がもたない・・)

 目を閉じ、寝よう寝ようと羊の姿を思い浮かべながら考える。なのに、すぐ傍に真壁がいると思うと体が熱くなってそれどころではなくなる。

 考えれば考えるほど、真壁のことが知りたくなってくる。

 学生時代のこと、留学していたというアメリカでのこと、趣味や好きなこと、そして異性関係。今、好きな人はいるのか? 交際している人はいないのか? 雪代椿という女を自宅に住まわせて問題はないのか?

 そしてなによりも――

(わたしのこと、どう思っているのだろう?)

 切ない疑問が胸を占める。

(匠さん・・)

 やがて、考えすぎて限界を超えてしまったのか、椿の意識はいつの間にか眠りの海に落ちていた。

     ***
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