キミのはじめてを。
「お、瑠璃川やってくれるのかあ」

「はい」

「えっ……」


先生が早く帰りたかったしな、とぼやくなか、クラスメイトもざわつきはじめる。

でも次第に「早く帰れるならいいか」という雰囲気になって、私の学級委員長生活が幕を開けたのだった。


そんな日から2ヶ月。今日は転校生が来るらしいと教室が色めき立っていた。


「転校生、男の子なんだって!ていうかイケメンだって聞いた!」

「えっマジ?!」


……ふーん、かっこいい人なんだ。

恐れられているせいで友達もいない私は、こうして聞こえてくるクラスメイトの会話から情報を得ている。


しばらくして担任の桜先生が教室に入ってきた。その後ろをついて入ってきた男子生徒。
教室の至るところから短い悲鳴が聞こえてくる。

ふわふわ、サラサラしていそうな柔らかい茶髪。きめ細かくすべすべしていそうな肌。

目は……………目は、閉じられている。

いわゆる『糸目』なのかな。あれで前見えてるんだなあ……


「みんながちょっと前からうわさしてたとおり、転校生がきましたー。はい、自己紹介して」

「芳野琉唯(よしの るい)です。まだ全然学校とかこの辺のことを知らないので、たくさん教えてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」


さっきは短かった悲鳴が長くなって、わき起こる拍手。いい人そうでよかった。


「それじゃあ芳野、お前の席はあそこーーーーーーーー瑠璃川の隣な」


そう、私が転校生のことを気にしていたのはこのせいである。


「……瑠璃川さん、これからよろしくね」

「……こちらこそ」


自分の隣に、転校生が座るからだ。
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