忘れて、思い出して、知る
「今日のも簡単すぎたー……あれくらいの事件じゃ手柄になんてならない」
律が悔しそうに言うと、栞は苦笑する。
宙は頼まれた飲み物をテーブルに並べた。
「最近俺たちが出ること、増えてるよな。そこまで難解な事件じゃないのに。やっぱ俺たちがいないとなんにもできねえんだな、一課は」
なぜか偉そうに、遥の隣に座る。
そして栞は部屋を見渡し、俯いた。
「私、ここにいるとなんだか辛いです。ここにある事件、すべてが解決されていないと思うと……世間に、警察は無能だと言われるのも、無理ない気がします」
「その無能さを失くすために、この課があるんだ」
すると、ドアを開ける音とともに、栞の言葉に答える声が聞こえた。
そこには、一人の男性が立っていた。
「お父さ……警視長」
男は栞の父親の隼人だった。
隼人を見て、全員が立ち上がるも、隼人はすぐに座らせる。
そして、自分は空いているソファに腰かけた。
「お前ら、また資料だけで事件解決したらしいな。誠が悔しがっていたぞ」
それを聞いて、律はニヤリと笑った。