忘れて、思い出して、知る


宙は自分の席に戻りながら、嫌そうに返事した。


隼人は水を受け取り、乾いた喉を潤す。



「それで、ケーキはどうしてあるんだ?」


「はいはーい、私が持ってきたの。今日のお菓子に、みんなでどうかなって」



律は冷蔵庫からケーキを取り出し、テーブルの上に置く。


箱を開くと、宙と栞が中を覗く。



入っているのはショートケーキ、チョコケーキ、シュークリーム、チーズケーキ、フルーツタルト。



「俺、ショート」


「俺はチーズケーキがいい」



隼人に続いて、宙がケーキを選んだ取り出す。


だが、あと三人は取ろうとしない。



「妃さん、真瀬さん。先に取ってください。私、一番後輩なので」


「いやいや、栞たちが先に取って。私、自分が食べたいのを買ってきたら、正直選べないの」


「俺、余ったのでいい」



しばらく無意味な譲り合いが続いた。


その間にケーキを食べ終えた宙が、箱に手を伸ばそうとする。



「一人一つだ、バカ」

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