忘れて、思い出して、知る
栞は恐怖でなにも言い返せないかと思いきや、遥のみぞおちめがけて拳を振る。
フリだったから、殴りはしていないが。
そして遥を見上げ、睨む。
「それを余計なことって言うんです!」
その様子を見ていた律と宙が笑う。
事件が解決せず、張り詰めた空気の捜査本部とは打って変わって、廊下では楽しげな空気が流れる。
「よし、そろそろ行こうか」
宙の言葉を合図に、三人の顔つきが変わる。
八課のメンバー四人は、遥を先頭にして後ろのドアから会議室に入った。
いつものように、その場にいる全員が八課を睨む。
しかし四人は、気にすることなく前方に歩いて行く。
「来たよ、ゴミ処理班」
「わざわざこんなところまで来なくてもいいのにな」
「俺たちの仕事の邪魔しに来たのかよ」
聞こえるように言われる悪口が、会議室に溢れる。