人面瘡
☆☆☆

包丁が自分の肉を切り裂いていく感触があった。


包丁が動くたび女のうめき声が聞こえて来る。


あたしはきつく両耳を押さえてなにも聞かない、感じないふりをしていた。


切り取り続けないと死ぬ。


たった1回切り取るだけでこれほど精神力を使うのだから、そんなの続けられるワケがなかった。


今日切り取っても、きっと明日にはまた同じように顔が出てきているはずだった。


それは終わりの見えない拷問と同じだった。


来る日も来る日も自分の傷口を切り取らなければならない。


そんなの、やっぱり続けられるとは思えなかった。
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