人面瘡
☆☆☆

それから1時間ほどが経過していた。


図書館の利用客は徐々に増え始めていて、あたしと雄生は一番奥の席へと移動して来ていた。


知り合いが来ないか冷や冷やしてしまう。


そんな中、妖怪や幽霊と言った本はほとんど読んでしまっていた。


どれもよくある話や都市伝説ばかりで、有力な手掛かりは見つからない。


おつねという名前の幽霊だけでも沢山いることがわかった。


雄生は最後の1冊を読み終えて左右に首を振った。


収穫なしか……。


ここで得られたヒントはおつねという女の名前だけだった。


あたしは右膝にむず痒さを感じた。


また膝にあの女の顔が出てきているのかもしれない。


いっそ本人に聞ければ楽なのにと思ったが、人を呪い殺したいと願っている人間が助けてくれるとは思えなかった。 


「人も増え始めたし、そろそろ出ようか」


雄生がそう言って席を立った。


「うん」


残念だけど、仕方がない。


あたしも同じように席を立った。
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