人面瘡
「出て来るかどうかわからなかったし、急かすのもあれかと思って」


雄生の優しさに胸の奥がジンッと熱くなった。


しかし、雄生はすぐに真剣な表情になり、あたしの膝へ視線を向けた。


「また顔が出て来たのか?」


「うん。前よりも、もっと鮮明な顔立ちになってるの。昨日図書館で見た顔で間違いないと思う」


「そっか……」


2人の間に重たい沈黙が下りて来る。


おつねが受けたことを知ってしまったあたしたちは、もう傷口へ向けてひどい言葉は言えなくなっていた。


それからあたしたちは特に会話もなく、学校へと向かったのだった。
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