人面瘡
☆☆☆

今日の1時間目の授業は体育になっていた。


参加するかどうか悩んだあたしだったけれど、膝の包帯を見た先生が休むように指示をしてくれた。


見学組のあたしは1人体操着を持って廊下を歩いていた。


沙和は1度もあたしを見る事なく、先に行ってしまったから。


1人で歩く廊下は寂しくて胸の奥がギュッと締め付けられるようだった。


いつもならあたしの隣には沙和がいた。


移動教室の時はいつも一緒で、楽しい会話をしながら歩く時間だったのに……。


思い出すと涙が滲んできて、慌てて手の甲で拭った。


こんなところで泣いてる場合じゃない。


早く行かなきゃ遅刻になっちゃう。


そう思って歩調を早めた時だった。


前方の女子トイレから春子が出てきて「アズサ」と、ほほ笑みかけてくれた。

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