人面瘡
昔ここが全部お屋敷だったなんて考えられない。


きっと想像もできないくらい立派なお屋敷だったんだろう。


「行こう」


そう言い雄生が先に門を乗り越えた。


あたしは春子のお父さんに手を貸してもらいながら、なんとか門を乗り越えた。


門を入ると塗装された通路が真っ直ぐに学校の来客入口へと通じている。



通路の右手には広いグラウンド。


左手には生徒玄関へと続く通路が枝分かれしていた。


見慣れた景色なのに、身震いをしてしまう。


あたしたちはここにおつねの顔が埋められていることも知らずに、毎日授業を受けていたのだ。


「どこから探す?」


春子のお父さんが後ろからそう聞いて来た。


どこと言われても、見当もつかない。
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