人面瘡
☆☆☆

あたしたちが子供の頃、公園のベンチは茶色に塗られていたけれど今はクリーム色に変わっていた。


そこに座るといろんな落書きが書かれている。


「昔あたしもこのベンチに落書きしたなぁ」


懐かしさに目を細めてあたしはそう言った。


「このベンチに好きな人の名前を書くと両想いになれる」


雄生の言葉にあたしは目を見開いた。


「知ってたの? そのジンクス」


子供の頃流行ったジンクスだ。


公園に集まる友達がいつの間にか言い出したジンクス。


それを信じて、あたしもここに雄生の名前を書いたんだ。


「知ってるよ。俺も書いたことあるし」


その言葉に自分の心臓がドクンッと跳ねた。


誰の名前を書いたの?


そう聞きたかったけれど、声にならなかった。
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