人面瘡
パニックで頭の中は真っ白だった。


ただ膝から感じる視線に恐怖心が湧き上がる。


笑った口もとは真っ赤に染まっていて、まるで血を含んでいるかのように見える。


「切除……」


あたしはポツリと呟いた。


そうだ。


まだ傷口を切除してしまえばいいんだ。


そうすればきっと膝は元通りになる。


そう思い、引き出しを開けてカッターナイフを取り出した。


カチカチと刃を伸ばしていく。


ためらいも、恐怖心もなかった。


ただ、膝で笑っているこの顔を取り除きたいと思うだけだった。


あたしはカッターの刃を自分の膝に突き立てたのだった……。
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