人面瘡
☆☆☆

血が自分の手を伝って流れおちて行く。


カッターを動かすたびに皮膚の表面ははがれて行く。


顔は時々悲鳴のような声を上げて、あたしを睨み付けている。


それでもあたしは手を止めなかった。


カッターをゆっくりゆっくり動かして傷口を切り取っていく。


不思議と痛みはなかった。


とにかくこの顔を体から切り離してしまわなければならない。


ただそれだけの思いで手を動かす。


そして数十分後、ボトリと音がした傷口が床に落ちて行った。


いつの間にか床は血まみれで、血の匂いが充満している。


「切れた……」


あたしはそう呟き、そのまま倒れるようにして眠りについたのだった。
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