人面瘡
「なにこれ、なんでこんなことに!?」


沙和は青ざめて声を大きくする。


「手術前の傷もこれと同じで目を開けてたの」


傷口はあたしたちが会話をしている間に何か奇妙な声を発している。


表面上にしか存在していない顔なのに、声帯もちゃんと稼働しているのだ。


それはあり得ないことだった。


「うそでしょ。アズサ、もう1度病院に行こうよ」


その言葉にあたしは左右に首を振った。


「何度切り取っても無理なんだよ」


「何度って……?」


「昨日、あたしは1度自分で傷を切り取ってるの。けれど、朝になったらまた膝には顔が出て来てる」


あたしの言葉に沙和は唖然としてしまった。


聞きたい事も山ほどあるだろう。
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