極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~


慶太さんに「行きましょうか」と言われ、案内される受付奥へと向かっていく。

慣れた足取りで私たちより先に奥のエレベーターホールへと入った女性が、上階に上がる扉を待機させ待っていた。


「迷わず来れましたか?」

「はい、大丈夫でした」


開いたエレベーターに乗り込みながら、慶太さんは私を気遣う言葉を掛けてくる。


Primary Stageに携わる話が出たあの日、私は慶太さんに一つお願いをしていた。

仕事をさせてもらうことになった時は、私を婚約者としてお披露目しないでほしい、と。

社長の婚約者……もし、そんな風に紹介されれば、スタッフたちは困惑し、いつも通りの仕事を行えなくなる。

そう思ったからだ。

それに対し、慶太さんはいい顔をしなかった。

何も隠し立てすることなんてない。

そう言って反対した。

< 117 / 358 >

この作品をシェア

pagetop